(仮称)奈良県少年補導条例(案)

http://www.police.pref.nara.jp/ikenbosyu/shounenhodoujourei/boshuu051114gaiyou.htm

☆ 不良行為とは

    犯罪ではないが、
    ・ 飲酒
    ・ 喫煙
    ・ 深夜はいかい
   等、そのまま放置すれば、少年の健全育成に支障を及ぼすおそれの
   ある行為
  をいいます。
   条例では、補導の対象になる不良行為の範囲を明確にします。

 うーん、オレは健全に育成されてないみたいだ。

☆ 補導とは

    街頭などにおいて不良行為
   を行っていた少年に対し、
     ・ 注意
     ・ その後の非行を防止するための助言又は指導
   などを行うことをいいます。
    条例では、警察職員の行う補導の内容などを明確にします。

明文化?

 明文化が目的らしいが、「不良の定義」なんて文章化できるものだろうか。第一、テキストに書かれた指導内容で助言したところで、子供たちを説得できるとは思えない。むしろ、オレみたいに論理とかで賢いふりしてる奴なんかは頭に来るだろう。

 学校の先生は、自分で研究して得た知識を以って教育する。良い先生ほど、自分の考えなどをしっかり持っていて熱心に話す。子供たちは、そう言う先生を好む。テキストを垂れ流すだけの教師は大抵嫌われるだろう。

 文章化された指導内容だけでは、子供の非行は防げない。子供たちのみならず、人が耳を傾けるのは、テキストの内容ではなく、生の人間の言葉だ。元不良少年が良い警官になり得るのは、自分が子供だったときに苦しんできたからだ。安定した生活で何も考えずに子供時代を生きてきた人ほど、人の痛みに無頓着になる。経験してきたこと、経験せずとも研究し続けてきたことが、善悪や是非に関わらず、人を導くときの標になり得る。どれだけ正しかろうと、善だろうと、声を失った言葉は人の心を打たない。

 そもそも「不良行為」という言い方が気に入らない。善悪や良し悪しというのは、基準になるものがあって成り立つ。「悪い」がなければ「良い」はない。「良い」があるから「悪い」がある。これらは経験則から生まれた観念的なもので、それに理由を付けてはっきりと述べられる大人は少ない。しかも、状況によっては簡単にひっくり返る。

不良って

 たとえば、未成年の飲酒はなぜいけないのだろうか。「酒は百薬の長」と言われる。適度な量ならば心身の妨げになることはない。飲酒で罪を犯すのは大抵「大人」で、「子供」は自制が利かないから危険というのは説得力がない。アルコール中毒になるのも「大人」で、社会の苦難から酒に逃げる親を見てる子供に、酔いの気持ち良さに任せるのが何故いけないかと教えられる人はいない。そもそもの問題は、飲酒によって自制が利かなくなったり、飲みすぎで反って毒になってしまうことであって、子供が酒を飲むという行為そのもののことではない。「大人」は良くて「子供」が悪いのは何故か。「当然のこと」では通じない。「子供は判断力が劣るから」と言われても、「子供」は「大人」より劣ってると思ったり思われたりすることを嫌う。急性アルコール中毒の危険は年齢に関係なくあり得る。更に困ったことには、飲酒の危険性を知っている人ほど良く酒を飲む。

夜の校舎と窓ガラス

 尾崎豊ではないが、高校時代のオレは「大人」が嫌いだった。彼らの言うことは、理に適ってはいるが筋が通っていない。「やるな」と言いながら自分はやる。優しくて面倒見の良い教師を演じながら、生徒に向かって責任逃れの発言をする。個性を尊重するといいながら、集団心理に簡単に流される。オレは飲酒も喫煙も徘徊も博打もやった。それを正せる人も正そうとする人もいなかった。ただ、尊敬すべき先人たちは自分のことは自分で責任を持て、と身をもって示していた。そして余計なことは決して言わなかった。

 ある雑誌に恋人募集の記事を載せたことで追討された教師がいた。一年のときの担任だった。他のクラスは教師の悪口で沸いていたのに、オレのクラスで彼を悪く言う生徒はほとんどいなかった。愛想のない教師だったが、決して嘘は言わなかった。面倒見の悪いふりをしながら、生徒たちのことを良く見ていた。学校を追われた翌年の合唱コンクールのとき、彼はこっそり会場に現れた。会場の外で再会したとき、彼はみんなの顔も名前もちゃんと覚えていた。「朝、ちゃんと起きれてるか」と話しかけられたときはうれしかった。一方で三年のときの担任は、一年で女子の顔以外忘れていた。

要するニダ

 もし「不良少年」というのがいて、更正の必要があるならとるべき道は2つ。明文化された規範を刷り込んで社会ごと洗脳するか、根気良く諦めず怠惰にならず子供たちと接するかのどちらかだろう。「不良行為の明文化」は前者の危険を孕む。加えて、規制されていないことは良いことだという考えを生む危険もある。

 「SEX and DRUG and ROCKN'ROLL」なんて冗談じゃない