a horror story

 夕べのこと。寝ようと夢うつつの私を妹が揺り起こした。

「お兄ちゃんお兄ちゃん、なんか電話がかかってきたよ」

 深夜2時。電話がかかってくる予定はない。

「なんかね、女の人で、泣きながら『タカシさん、いますか』って」

 女の人? 何人か顔が浮かぶ。しかし、自宅宛に電話をかけてくる知り合いはいない。

「『どちらさまですか』って聞いたら黙っちゃって、もう一回聞いたら切れちゃった」

 妹は知らない声だと言う。私も誰だか思いつかない。

「すごく悲しそうに、泣いてたよ」

 悲しそうに。

 しかし、何かあって、私に助けを呼ぼうとしていたとしても、自宅にはかけない。

 ふと、あることに思い立って私は尋ねた。

「え? たった今だよ」

 電話が鳴る音を、私は聞いていない。

何があったのか

  1. 自宅の電話番号しか知らない人が、オレに恋焦がれて寂しくなった
  2. 霊感豊かな妹が怪しい電波をキャッチした
  3. 新手のオレオレ詐欺