「その「少女」は本当にいないのか?」について

 比喩を持ち出すと話がこじれる典型。

例えばクルマなんて見渡す限りいないのに赤信号で律儀に止まるのは、そのような状況下でさえ信号無視は社会的な合意に反すると感じるからだ(別に日本人に判断力が無いからではない)。
それが社会的に容認されている事がどうかは明らかに人の行動に影響を与える。このチカラを「確かな証拠はありません」というだけで無視できると考えるのは危険としか言いようが無い。
(あるいは本当に交通法規に従っているだけなのかな。。)

 ちょっと待て。

 多くの人が信号無視をしないのは、「社会的な合意」なんかじゃなくてそれが法で禁止されているからだ。逆に法で禁止されてもいないのに、「社会的な合意」なんかで規制されたらそれこそ危険だ。かつて法整備されていない閉鎖的な集落で起こっていた村八分みたいな、「社会的な合意に反する」ことを理由とした処罰や処刑がどれだけ差別的で危険なものだったかは、歴史や記録を見れば分かる。

(信号機の信号等に従う義務)

第七条  道路を通行する歩行者又は車両等は、信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等(前条第一項後段の場合においては、当該手信号等)に従わなければならない。

   (罰則 第百十九条第一項第一号の二、同条第二項、第百二十一条第一項第一号)

 ひとまず児ポ法と道交法を比較すること自体がおかしい、という点についてはさておき。

なんのための信号機?

 そもそもなんで信号ができたのか、なぜ信号を守らなければいけないという法律ができたのか。理由は単純で、信号があると「場合によっては」交通の流れが整理されて交通事故が減るからだ。そして流れが整理されている以上、信号を守らないと流れを乱し、交通事故が起こる可能性が飛躍的にあがるからだ。

  第一章 総則

(目的)

第一条  この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする。

 赤信号は「止まれ」という義務*1だが、青信号は「進め」ではなく「進むことができる」という権利。そして(いずれにせよ左右確認は必要だが)青信号の権利を行使できるのは、他の車両や歩行者が赤信号の義務を守っているという前提の上にある。だから赤信号の義務を果たさず交通事故を起こした場合の罪は重い。

 「例えばクルマなんて見渡す限りいないのに赤信号で律儀に止まる」のは義務だ。では「クルマが見渡す限りいなければ止まらなくても良い」という権利がなぜ存在しないのか。これも理由は単純で、「クルマが見渡す限りいなければ交通事故は起こらない」という保障が一切ないからだ。しかも判断は主観と状況に基づいているため個人の能力や場所、時間、天候などあらゆるものに左右される。これでは安全な交通を確保することは不可能となってしまう。だから赤信号を「止まれ」という義務にすることで、極力主観や状況に頼らず安全な交通を確保しようとしている。また青信号が「進むことができる」という権利なのは、「進め」という義務にしてしまうとかえって危険だからだ。義務とはいえ信号を守らない人は必ず現れるし、偶発的な状況や事故で赤信号で止まれない場合などもある。そういうとき、危険を感じても進まなければならないでは事故を助長するだけだ。

 最後になぜ信号機を設置するのかについて。日本には信号機がある交差点と、信号機がない交差点が存在する。なぜ「ない」のかというと、設置していないからだ。ではなぜ「ある」のかというと、「ないと危ない」のではなくて「あれば安全」だからだ。だから安全な通行が保たれている交差点には信号機を付ける必要がないし、無闇につけるとかえって交通の妨げになるから設置してはいけない。また「安全になるなら全ての交差点に信号機をつけるべきだ」という意見に対しては、「悪魔の証明」とだけ補足しておく。

公安委員会の交通規制)

第四条  都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、又は交通公害その他の道路の交通に起因する障害を防止するため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、信号機又は道路標識等を設置し、及び管理して、交通整理、歩行者又は車両等の通行の禁止その他の道路における交通の規制をすることができる。この場合において、緊急を要するため道路標識等を設置するいとまがないとき、その他道路標識等による交通の規制をすることが困難であると認めるときは、公安委員会は、その管理に属する都道府県警察の警察官の現場における指示により、道路標識等の設置及び管理による交通の規制に相当する交通の規制をすることができる。

2  前項の規定による交通の規制は、区域、道路の区間又は場所を定めて行なう。この場合において、その規制は、対象を限定し、又は適用される日若しくは時間を限定して行なうことができる。

3  公安委員会は、交通のひんぱんな交差点その他交通の危険を防止するために必要と認められる場所には、信号機を設置するようにつとめなければならない。

4  信号機の表示する信号の意味その他信号機について必要な事項は、政令で定める。

5  道路標識等の種類、様式、設置場所その他道路標識等について必要な事項は、内閣府令・国土交通省令で定める。

   (罰則 第一項後段については第百十九条第一項第一号、第百二十一条第一項第一号)

結局何を言いたいのかと言うと

 法について語るためには先ず法の知識や文献が必要ということ。

 オレ自身、まともな教育を受けたわけじゃないし、自分で詳しく調べたわけでもないが、今の時代ならネットで「道交法」と入力すれば参考となる文献は簡単に見つかるから、最低限の知識を得ることは可能だ。

 児ポ法と道交法を比較すること自体がおかしい、という点については余力があればまた改めて。

*1:「緊急回避」の場合は除く