犯罪者は悪人か
最初に、オレは「犯罪者＝悪人」ではないと考えている。加えて言うと、「悪」とか「悪人」とかいうものは主観に基づく概念的なものでしかないとさえ思っている。
揚げ足を取るが、
いや、犯罪をするのは不味いと思うけど、それはブログを運営していた人が犯罪者だったわけじゃなくて、犯罪をやらかした何処かの馬鹿がウエブログをやってたってだけの話ですよね。 (中略) めちゃくちゃな生活をしようと、どん引きするような趣味を持っていようと犯罪に走らなければウエブ上でどんな活動していようと関係ないですよね。
ということは、犯罪を起こしたらウェブ上で活動してはいけないのか。
なぜ？
思いつく限りを列挙すると、
- 犯罪者の言うことに耳を傾けてはいけない
- 犯罪者の行動から犯罪者でないものを守らなければならない
- 犯罪者の言動は制限されなければならない
- 犯罪者は言動してはいけない
上記のように考えられるが、いずれにせよ法的な措置なく行えば人権侵害となり、むしろ行った側が犯罪者となる。
分かりにくいかもしれない。
単純に「犯罪者」と言うと、非現実的で自分とは関係ない世界の人に思えるかもしれないので、犯罪者を「百円を拾った私」だとしてみる。
- 百円を拾った私の言うことに耳を傾けてはいけない
- 百円を拾った私の行動から百円を拾った私でないものを守らなければならない
- 百円を拾った私の言動は制限されなければならない
- 百円を拾った私は言動してはいけない
ついでに世界的大犯罪者であるガンジーにもお越しいただいてみた。
本当に？
そもそも犯罪者とは何だろう。
罪を犯すこと。また、犯した罪。法律上は刑法その他の刑罰法規の規定により、刑罰を科される行為をいう。
つまり罪を犯したと認められたら犯罪者だ。
イエス・キリストは、ユダヤの選民性と奴隷制を否定したため処刑された。
ヒトラー政権下でドイツ人はユダヤ人を迫害した。今では人種差別は犯罪行為に当たる。
華陀は曹操に頭痛の治療のために脳の外科手術を提案し、殺害を目論んでいるとして処刑された。
日本は太平洋戦争を起こして敗北し、戦犯と認められた。
三年後、仙台市民であることが罪であると言う法律ができた。
- キリストの言うことに耳を傾けてはいけない
- ドイツ人の行動からドイツ人でないものを守らなければならない
- 日本の言動は制限されなければならない
- 仙台市民は言動してはいけない
こうしてみると明らかにおかしいと思える。ではなぜ「犯罪者」の言動を無闇に制限したり、迫害しようとするか。
そこには「犯罪＝悪」、「犯罪者＝悪人」と言う意識が働いているのではなかろうか。
かつて一度だけ万引きをしたことのある少女は悪人か。
つまらないケンカで友達を殴って怪我をさせたことのある少年は悪人か。
おそらく多くの人が「そうとは限らない」と言うだろう。
WinMX やWinny の作者は犯罪者となったが、では彼らが培ったP2P という技術も悪か。
一太郎は松下電工の知的財産を侵害したから、一太郎も花子も、その会社が作るあらゆるソフトも全て悪か。
おそらく多くの人が「それとこれとは関係ない」と言うだろう。
とある男性が、普段から自分を恐喝する友人を刺し殺そうとしたが、命乞いをする相手を見て考えを改めたとしても、彼は悪人か。
おそらく多くの人が「そうではない」と言うだろう。
犯罪も犯罪者も、状況や立場によって見方が変わる。「悪」だとか「悪人」だとかいう定義は主観的で曖昧なものでしかないのだ。
そもそも法によって明言されている罪と、主観でしかない「悪」などと言うものを同一視すること自体がおかしいのだ。
犯罪はその法において罰せられるべき罪であるが、犯罪が「悪」だからといって犯罪者の人格を否定したり無闇に言動を制限してはならない。
万引きしたことのある少女をあらゆる店舗から締め出そうとする人は多くない。
友達に怪我をさせたことのある少年を、あらゆる人間から隔離させようとする人は多くない。
犯罪の重さが違うと人は言うかもしれないが、罪の重さは裁判で判決されるべきで、またその重さは刑罰にだけ影響するものでなければならない。 でなければ誰かにとって都合の良いように人を裁く行為を容認することになるし、また全く関係のない人間が犯罪者やその親類、近しいものをを責めたり攻撃したりすることを容認することになる。
めちゃくちゃな生活をしようと、どん引きするような趣味を持っていようと犯罪に走らなければウエブ上でどんな活動していようと関係ないですよね。
ではなく、
めちゃくちゃな生活をしようと、どん引きするような趣味を持っていようと、「それ自体が」犯罪行為でなければウエブ上でどんな活動していようと関係ないですよね。
と言うべきだったのではないか。
