著作権保護なんざくそくらえ

 著作権保護なんて止めたらいい。あんなものは百害あって一利なし。著作者の利益ばかり保護して準著作者が潰れれば、いずれ日本の文化は廃れてしまう。

 たとえば現在でも評価が高い、夏目漱石の代表作に「こころ」というのがある。

 近年、これを現代解釈で描いた漫画が発表された。本作に劣らずすばらしい出来で、二次創作の可能性を魅せた好例と言える。

 しかしもし夏目漱石が生きていたなら、もしくは死後50年経っていなかったとしたらどうだったろうか。

 勝手に書いたら著作権侵害で訴えられるかもしれない。許可を求めたら高額な版権料を求められるかもしれない。

 いずれにせよ、この漫画が世に出されることがなかった可能性が高い。優れた作品が描かれることがなく、この作家も世に出る機会を逸していたかもしれない。

 著作権保護の最たる名目の一つに、著作者の利益を守るためというのがある。じゃあ夏目漱石が生きていたとして、この漫画が本当に著作者の利益を侵害していただろうか。

 答えは否。なぜなら夏目漱石にこの漫画を描くことは不可能だからだ。つまり著作権保護を名目に発表が禁止されたなら、この漫画が描かれることは決してない。加えてこの漫画が好評を得れば、オリジナルの読者が増えるため、かえって著作者の利益に貢献することになる。

 許諾を得て版権料を支払えば済むという意見もある。しかし誰もが版権料を支払えるわけではない。許諾を得ようにも、声が届かないこともある。

 二次創作なんてしないでオリジナルを描けという意見もある。しかし誰もがオリジナルを描けるわけではないし、二次創作の分野でこそ力を発揮する人もいる。もっと根源的な理由として、そもそも模倣なくして発展はありえない。

 著作権が切れるのを待てという意見もあるが、これはナンセンスとだけ言っておく。

 作品を愛するがゆえに二次創作を行う。これのどこに罪があるだろうか。それが不当に著作者の人権や利益を侵害しているとしたら、やりかたそのものに問題があるのだろうが、作品を愛する人がそれを敢えて行うことは考えられない。

 広告や宣伝には限度がある。どれだけ素晴らしい作品であるかを訴えたところで、実際がどうなのかは見てみないと分からないし、人によって解釈も違う。二次創作はこれを補てんする。最近、エヴァンゲリオンやヤマトなどの版権もののパチンコが人気だが、セリフや名シーンを数多く利用しているため良い宣伝になっていて、これで原作に興味を持った人は少なくない。*1

 著作権の保護期間が著者の死から50年に引き上げられたことを受けてか、昨今、著作権保護が人気で、紹介のために画像を載せたサイトが訴えられるといった事態にまで及んでいる。紹介サイトがどう著作者の利権を侵害しているのか教えて欲しい。むしろ積極的に貢献しているというのに。

 経済と同様、保護が行き過ぎれば発展が滞って停滞する。積極的に著作を発表しようとする人自体が減るからだ。人が減れば競争も無いから、「他より優れたものを作ろう」という努力をしないようになるからだ。それよりは保護なんてしなければ競争が激しくなって優れた著作を作ろうとするし、制限も少なくなるから参入も増える。

 だから著作権保護法なんて廃止してしまえばいいのだ。

REFERENCES

こころ (ビッグコミックススペシャル)

こころ (ビッグコミックススペシャル)

*1:しばしばイメージを損ねると言われるが、オリジナルを見れば解決することだし、見ずに「ああ、パチンコのでしょ」とか言う人はそもそも見ないのだから気にすることはないだろう